30年遅れの映画日誌。 1985年3月分。
ミクロシュ・ヤンチョー『ハンガリアン狂詩曲』
1978 MAGYAR RAPSZODIA
1910年、オーストリア=ハンガリー帝国の地方の名主ジャダーニ家では当主が国会にうって出る祝賀会が開かれていた。一方、小作農らも農民運動の指導者バクシャを立てて集会で気勢をあげていた。これを規制する官憲に業を煮やし、農民らはジャダーニ家に集まる人々へポンプで放水して憂さを晴らした。一家の長男イシュトヴァーンはバクシャの家へ押しかけ逆に叩きのめされ逆上し、彼を殺してしまう。やがて第一次大戦勃発。イシュトヴァーンは殺しの目撃者セレシュ=トートを部下とし、権限を誇示したが、戦局は敗色濃厚で、彼は部下の告発を恐れる。農民たちの革命が起きるが失敗に終わり、新政権の牢相カーロイは農民とパイプを持つイシュトヴァーンを農相に取り立てようとし、彼の過去を盾にセレシュ=トートも彼を傀儡にしようと、その職を受けるよう睨みを効かす。苦悩するイシュトヴァーンはある日、幼い少女マリと出会う。バクシャの孫娘である彼女を連れて彼の家へ出かけたイシュトヴァーンは、その息子と殴り合い、決着のつかぬまま二人して倒れる。そこへ聖イシュトヴァーン祭を祝う行列が現れ、彼もその中に加わって歩んでいく……。
テオ・アンゲロプロスに影響を与えたシークエンス・ショットを駆使し、ハンガリーの近代史を立体的に裁断するヤンチョーの作品は、そこに知識のない者も共鳴できるよう、民族音楽を賑やかに配しミュージカル絵巻風ですらあり、通り一遍の“叙事詩”映画とは深みも違って、なかなかにタフである。
allcinema onlineより
2022-09-04